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歯車技術士事務所 川崎芳樹


平成10年(1998年)4月9日日本工業新聞日刊掲載記事

平成の名匠 最先端の技術者・研究者たち

歯車博士 川崎 芳樹さん(4) いすず自動車

誤差あって一番とれる 異人種交流の夢

トランスミッション(伝動装置)で最大の問題は、ギアノイズの克服だ。しかし歯車には、いわく言いがたしの面がある。誤差のない高精度の歯車同士をかみ合わせても「それが最高」と いうわけにまいらない。歯車博士こと、川﨑芳樹(52)=写真右から2人目=は、おもしろい喩で説明してくれた。

美男美女が結ばれても、最高の美人が生まれるは限らないでしょう。自動車の歯車は、それと同じですよ。多少は、誤差のある歯車をかみ合わせたほうがよろしい

道路の環境、ドライバーの運転の仕方など、いわゆる外乱によってトルク(軸の回転力)は瞬時に変化する。トランスミッションに求められるのは適応力と言われる。 ギアノイズの原因を追って、何度も挫折を味わいました。一人では何もできませんね平成の名匠連載4回目歯車博士川崎芳樹さん

川﨑のもとへ、精鋭が集まった。軽部正彦(現コンポーネント工場品質管理課)、 杉野慎一郎(同ギヤラボG)、稲田昭宏(同技術開発部要素技術グループ)といった面々。

彼らは、ギアノイズの測定評価システムを完成させ、2年前に米国の特許を取得している。 川﨑は、力をこめてこう言う。

管理(心)と技術(頭脳)と、技能(腕)の三つが対等にそろって はじめて新しいモノが生まれる。モノづくりは人づくり。人が替わればモノも変わります
ギヤラボ課長、ギヤラボ課長、コンポウネント工場長を経て、1979年4月から技術開発部長の 職にある。

世界に冠たる歯車生産技術を確立した余勢をかってディ―ジルエンジンに取り組む。

いすゞは71年7月、世界最大の総合自動車メーカー、米国ジェネラ・.モーターズ(GM)と資本・ 技術・販売など総括的な提携を結び、四分の一世紀以上にわたって関係を続けてきた。そして97年 夏、GMグループのディーゼルエンジン開発は、今後いすゞが主体となって進めていくことで合意したのだ。

ディーゼルで世界一にならなければ、いすゞの明日はない

と川﨑の決意は固い。 そのため、彼には"異人種交流"の夢がふくらむ。

スタッフのひとりに台湾人の博士がいるけど、さらにインド、ベトナム、カンボジアなどの人材を 集めたいという。川﨑には、大学時代から続けている趣味に社交ダンスがある。 休日には、東京・新宿のステレオダンスホールに通い、たくみにタンゴやワルツのステップを踏む。 異人種の才能が一つの輪になる日も近いだろう。

=文中敬称略=

*かわさき・よしき いすゞ自動車    技術開発部長 工学博士 技術士

ジャーナリスト 島谷泰彦

連載終了

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